【環境整備の管理サイクル理サイクル】
自家用受変電設備(自家用電気工作物)の環境整備すなわち保安は、設置者が、環境整備には、予防保全と事後保全に分け、保全技術者は一人一人が細心の注意と問題意識をもって電気設備に対し、問題点を摘出し改善して、次期計画に反映させる “管理のサイクル” を回すことが大切です。
予防保全
年度点検計画に基づき、日常巡視点検・定期点検・精密点検が柱となります。
【設備の劣化ガイド】
1.劣化対策の重要性
保安管理を受諾している電気設備は、6.6KVの高圧引込線から、低圧の負荷設備ですが、これらは、電線、ケーブル、受変電機器及び電動機、照明等で構成されています。
これらの電気設備は、その使用環境や使用条件及び保守管理の不十分等によって、その性能が劣化していくことは人間の身体と同様です。
しかし、劣化が進行し、そのまま放置しておくと、絶縁破壊あるいは機能が停止し、重大事故発生につながることになるので、劣化要因をよく認識したうえで事故発生前に適切な対策を講じる必要があります。
最近の電気設備は材料、機器なども進歩し、また設計施工技術も種々改善され、信頼度も向上しつつありますが、現在、設備の中には相当年月を経ているものがあるので、その劣化対策は一律的では、不可で、対象物に最も適切な劣化対策が各々必要となってきます。
2.電気設備の劣化要因
電線、ケーブル、がいし及び高圧機器等は、その使用電器、使用条件または使用回路に生じる短絡、地絡等による影響など種々の要因によって劣化が進み、事故の原因となるわけで、その程度は同一機器でも若干の相違が生じるのは当然でありますが、以下に一般的に説明されている劣化要因を紹介します。
(1)環境的要因
じんあい、汚損、塩分付着、湿気、高温、腐食性ガス、紫外線(表面絶縁不良)グリース硬化、金属腐食(接触不良、破断、折損)、絶縁物変質(トラッキング)
(2)電気的要因
A.外雷・内雷によるサージ電圧と過電圧(部分放電)
B.過電流開閉(アーク溶損と消耗)
(3)電気的要因
過負荷、短絡、高調波侵入、ヒートサイクル(重合度低下、膨張収縮、変形、ゆがみ、弾性低下)
(4)機械的要因
動作の繰返し、外部応力、振動、衝撃、過電流、短絡(疲労、亀裂破損、磨耗、変形、接触不良)
(5)化学的要因
絶縁低下、部分放電(化学生成物)
(6)その他の要因
A.外傷、小動物の侵入
B.設計、製作、施工及び保守の不良
3.電気設備の劣化対策
電線、ケーブル、がいし及び高圧機器等は、その使用電器、使用条件または使用回路に生じる短絡、地絡等による影響など種々の要因によって劣化が進み、事故の原因となるわけで、その程度は同一機器でも若干の相違が生じるのは当然でありますが、以下に一般的に説明されている劣化要因を紹介します。
(1)機器の劣化故障の形態
機器の典型的な劣化故障パターンを示すものに、バスタブカーブがあります。
機器の寿命に対する基本的概念を知るうえで参考になるのでご紹介します。
B.偶発故障期A.初期故障期
機器の運転を開始して、しばらくは、外部的環境になじまない弱点や、設計、製作の不具合が現れる。この期間は、時間の経過と共に、故障率が低下する傾向を示す。
初期故障期を過ぎると、故障率が時間の経過に関係なく、ほぼ一定の期間が続く。この期間は故障率が低く、安定した運転が期待出来る。
C.磨耗故障期
偶発故障期を過ぎると、構成部品の劣化や磨耗などにより、時間の経過に伴って、故障率が増加する時期がくる。この時期は設備としての機能を維持するためには、機器のオーバーホール又は更新が迫った時期である。
図のB点をどこに取るかということで、この具体的数値は当該機器が故障を起こした場合の二次災害の影響や、故障に伴う停電の影響等によって、各設備ごとに決めるべきものである。
また、この偶発故障期から磨耗故障期に移るまでの期間は、次の要因に左右される。
1.使用条件・環境条件 2.保守点検状況 3.機器の構造(機械的・絶縁物・構成材の材質など)
(2)汎用高圧機器の更新推奨時期について
(社)日本電機工業会では、平成元年9月に高圧機器10種類の更新推奨時期について調査報告書を発表しているので、一部を紹介します。
尚、報告書の更新推奨時期は、前記の図のバスタブカーブのA点を指しています。
<万一、故障した時の発生事故>(3)電線・ケーブル等の更新推奨時期
昭和52年頃までに製作されたCVケーブルについては、水トリー事故が続発したためと、高圧ケーブルの場合はその増設条件によっても寿命に影響を受けるので、使用年数にかかわらず、定期点検の際には高電圧絶縁抵抗計で測定するか、直流漏れ電流試験を行なったり、使用中の場合は活線診断装置による絶縁診断を行なうなどの劣化の早期発見に努めて、不良ケーブルの早期取替を実施すべきだと言われています。
1.CVケーブルは、水トリーによる自然劣化により絶縁破壊を生じると、波及事故になります。
2.ケーブル端末の事故で多いのは自然劣化で、最終的に波及事故になります。
3.又、ケーブルの金属製終端箱は、内部コンパウンドの劣化により短絡すると、波及事故になります。
【停電による定期点検について】
1.定期点検の目的
「電気設備技術基準」は、電気設備施設者が守らなければならない、最低限の維持規則です。
「定期点検」は、自家用電気工作物がこの「電気設備技術基準」に適合しているかどうかを調べる為に実施されるものです。
特に、電気設備を停止して、測定や試験を実施した場合は、五感による日常(巡視)点検では、不可能だった箇所の点検や清掃も実施できます。したがって、電気設備の異常を早期発見する度合いが高く、電気事故を未然に
防止するために重要な点検です。
2.定期点検の必要性
設備の劣化故障パターンを、時間の経過との関連で調べ上げていくと故障推移曲線(バスタブカーブ)が描かれます。電気設備の耐用寿命は、このバスタブカーブの偶発故障期間の長さに、ほぼ比例すると考えるのが一般的です。したがって、この期間を少しでも延ばすには、適切な補修時期を見つけるための「定期点検」が必要となります。
設備の劣化故障パターンを、時間の経過との関連で調べ上げていくと定期点検の総識者は、万が一にも、事故にならないよう、慎重に計画し、成果をあげて、責任と義務を果たさなければなりません。3.実際に定期点検はこのように行なわれます
(1)まず実施計画をたてる
お客様と次の事項を点検予定日の1ヶ月半前までに相談し決定する。
1. 担当主任技術者と点検実施予定期日
2. 作業時間及び停電及び復電時間の予定
3. 定期点検の内容と作業人数
4. 連絡責任者の点検立会い
(2)事前準備を万全に
次の事項について準備をする。
1. 設備の事前確認
2. 作業協力者の手配
3. 必要機材等の準備
4. 電力会社への引込用分岐開閉器操作依頼を行なう。
5. 作業分担と各作業者の担当割振り。
(3)責任体制及び安全対策確認
1. 作業人員は電気管理技術者等が2人以上で行なうことを原則とする。上記の場合、その事業場の受諾者である電気管理技術者が点検の責任者となる。
2. 責任者は作業協力者との作業方法等の打ち合わせを十分に行い、事故防止を図ること。
(4)定期点検の注意点と実務
1.作業現場状況の把握
作業日の季節、許容停電時間、現場の照明などの諸条件を把握して、計画の中に組み込みます。
2.点検作業能力の把握
作業従事者の知識・熟練度などの能力、測定機材の充実度、作業量と所要人員などを把握して、事前の準備を進めます。
3.停電範囲の徹底
作業現場事業場の電気使用責任者を通じて、電気使用関係部門へ停電の周知徹底をはかります。単線結線図と照合しながら、作業関係者全員に、停電範囲と作業内容の周知、および個々の持場分担の確認をする。
4.停電操作
操作者を指名し、所定の操作基準に基づいて、受変電設備を停電させます。
5.点検作業
A.目視点検一般的に電源側から順次、観察点検を進めますが、停電状態でなければ実施できない箇所を、重点的に調べるようにします。
B.測定試験接地抵抗測定、絶縁抵抗測定(高・低圧)、保護継電器の各動作特性試験、遮断器の動作試験、変圧器油の絶縁破壊電圧試験・酸価度測定等の、所定の業務を実施します。
6.送電操作
所定の操作基準に基づいて、受変電設備を送電します。
7.送電後の確認
設備が完全に作業前の状態に復元されており、支障なく稼動していることを確認します。作業結果や成績記録の内容をチェックして、報告書作成に備えます。
(5)定期点検後の処置
<不良箇所及び要改良箇所の処置>
定期点検において、点検・試験の結果、至急修理あるいは改修を必要とするものを発見した場合には、設置者にその旨懇切に説明し、改修を要請するとともに、「自家用電気工作物に関する連絡書」を2通を作り、1通はお客様に提出し、1通は設置者の確認印をもらって電気管理技術者が保管し、不良箇所等の改修・改善に努め、事故の未然防止を図ることが、電気管理技術者等の重大な任務の一つと考え、時期が遅れないように実行することを心がけています。
4.お願い
お客様の業種や、建物の稼働状況によっては「停電作業」はできない、または難しいとお考えかもしれません。
しかしながら、高圧電気設備がどの程度劣化しているか、地絡事故の際に継電器が正常に作動するかなど、1年~3年に一度精密な試験・測定などを行なっていないと万一の場合に自己所有の設備の故障・破損はもとより、地域停電まで発展する事故などを起こすと、近隣の方々にご迷惑をおかけする事態をまねきかねません。
空調などを使わない季節と時間帯を調整し、定期点検を実施する計画を立てて下さいます様、お願いします。
【雷による影響】
1.雷放電の概要
2.法律上の規制について雷雲中に生じる電荷が大気中で絶縁破壊を起こし、地表上に放電する現象をいい、電流値は20~150KVA程度といわれています。雷電流が流れますと、そのまわりに生じた電磁波が配線電路を横切る時に、その電線に磁界強度の急激な変化が生じ、誘導雷サージが発生します。誘導雷サージは、電線路を伝わって、両端に接続されている自家用需要設備に、瞬間的に激しいエネルギーを加え、高圧機器等を破損します。誘導雷サージ電圧は、例えば、電線路と落雷地点の距離が50~100mで、雷電流が100KAの場合、400~500KVと予測されます。
<電気設備技術基準・解釈第41条>では、
「高圧架空電線路から供給を受ける受電電力の容量が500KW以上の需要場所の引込口には、避雷器を設置しなければならない。」
と規定されています。電技・解釈では、500KV未満の需要設備には避雷器の設置を必ずしも義務づけておりませんが、雷による危険度は、設備容量の大小によって異なるものではないので、多雷地区では設置することが望ましいといえます。
3.雷による事故について
経済産業局管内のある年度の参考例によると受変電設備の電気事故186件中、雷による被害件数は31件でかなり高くその被害機器名と占める割合は、下記の通りです。
遮断器(22%)、計器用変成器(19%)、電線・導体など(10%)、断路器(6%)、高圧交流負荷開閉器(6%)、その他(37%)
4.雷対策として
受電電力の容量が500kW未満であっても、避雷器の設置が望ましいと思われます。
(1)避雷器とは
雷および回路の開閉などに起因する衝撃過電圧に伴う電流を、大地へ分流することによって、過電圧を制限して、電気設備の絶縁を保護して、かつ、続流を短時間に遮断して、電路の正規状態を乱すことなく原状に自復する機能をもつ装置をいいます。
(3)架空地線による雷サージの抑制(2)避雷器の誘導雷サージの抑制効果
避雷器は誘導雷サージに対して機器、碍子等との絶縁強調を保つため、一般に使用されるので、これらの近くに、設置すれば絶縁強調の効果を高めることができます。しかし、直撃雷によるフラッシュオーバーを防止することはほとんど期待できないので、避雷器の設置は、誘導雷サージの抑制による事故防止が主目標となります。
架空地線は、雷直撃時の逆フラッシュオーバーの防止、誘導雷サージ並びに近傍落雷時、線路導体・支持物などから生じるコロナストリーマの抑制に効果があり、配線電路でも耐雷施設の一つとして使用されています。
【台風にご注意】
1.防災体制の整備
2.整備要領電気工作物の保安を確保するため、台風災害時には緊急に適切な処置を取る事が要求されますが、これについて災害状況を設定して、電気設備の運転・停止などの操作、維持に関することなどについて、防災体制の整備を図る必要があります。
(1) 災害時の指揮系統を明確にし、周知徹底を図る。
(2) 通報・連絡の方法を定めておく。
(3) 保安電力を最優先とし、負荷設備の優先順序を定めておく。
(4) 緊急措置を基準化しておく。
(5) 防災教育訓練の年間計画をたて実施する。
3.台風時の緊急処置のポイント
4.台風後の処置(1) 台風情報にたえず注意する。
(2) 風雨の吹き込み、浸水等を監視する。
(3) 状況により停電処理が取れるよう、方策をたてておく。
(4) 塩害に注意を払う。
雨の激しい台風が去った後、まず電気設備の「臨時点検」を実施する。
(1)双眼鏡で架空引込線、及び高圧引込口付近を点検する
点検した結果、高圧ピン碍子のひび割れやケーブル端末部の剥離等が発生した場合は、早急に交換する。
(2)受電室を点検する ※受電室がある場合
又は、キュービクルの場合はその周辺と内部を点検する。
<通常の点検以外の項目として>
A.受電盤前面の床に水溜りがあり、天井に雨漏りの形跡があれば早急に修理をする。
B.キュービクル内部のガラス窓を点検。ガラスの一部が破損し雨が吹き込んだ形跡があれば、早急に修理する。
C.屋外キュービクルの周辺は、前夜の強風で周囲の樹木の枝が、キュービクルにのしかかっていたら、枝払いをすぐにする。
D.キュービクル内部の結露が発生していたら、換気扇を至急動作させるか、不良であれば至急に交換する。
E.キュービクル基礎部アンカーボルトの緩みやひずみ、破断などないことを確認する。
F.支持物のルームパイプが傾斜したり、高圧機器等に落下物がないことおよび天井や壁にひび割れ、雨漏りが発生していないことを確認する。
G.高圧機器間及び高圧機器と母線との接続箇所に緩み、外れがないことを点検により確認する。